今年は雪の少なさが際だっている。林道はほとんど雪解けが進み車は獅子ケ鼻取水口目前まで入ることができた。車は地元の秋田ナンバーが1台だけである。その先発隊4人組は私達が到着すると入れ違いに登りはじめていった。周辺は早くもミズバショウが咲き乱れている。中島台は少しブッシュがうるさい部分もあるがしばらくすると快適な尾根歩きとなった。やがて905m点が近づくと左手には鳥海山が忽然と姿を現わしてくる。ここからの景観はいつ見ても素晴らしいものがある。ここで先行していた4人組に追いつきしばらく立ち話となる。聞いてみれば秋田のなんどさん達であった。なんどさんといえばインターネットでは有名な存在で「つくばやまハイキング」を主宰している人である。そこからはこの4人組としばらく前後しながら進むことになった。
森林限界を過ぎると見渡す限りの雪原となる。右手の稲倉岳はほとんど雪がついていないがそれだけに大きな岩壁が覆い被さってくるような迫力がある。前方の高みは鳥海山だが距離はまだまだだ。標高差はまだ1100mもあり考えるだけで目眩がしそうであった。森林限界を越える辺りから急に風が強まってくる。それも非常に冷たい風でありそれまで下着一枚だったが、ここで完全装備に身を固めなければならなかった。久しぶりに寒気が入っているらしく、先日までの初夏を思わせるような陽気がウソのようだ。日本海に直接面している鳥海山ではシベリアからの季節風がまともにぶつかってくるためか予報通りの天候とはゆかないようであった。
七五三掛へは大きな急斜面を登らなければならない。足はすでに棒のようでもあり感覚が麻痺している。上野氏はゆったりとしたペースで休むこともなく登っている。僕はペース配分がずいぶん下手なようだ。ときどき急斜面で立ち止まっては呼吸を整えなければならないのである。途中で追い越してきた秋田グループは千蛇谷に沿って僕たちを追ってきていた。
急坂を登ればそこはすでに標高1800mを超えている。外輪山は目の高さまでになり、ここまでくると高度感が増してきたのを実感出来るところだ。外輪山では強烈な雪煙が舞っていた。前方にはすでに新山の岩峰が見えている。山頂まではもう少しなのだ。がんばろう。急坂直下ではお互いにアイゼンを装着した。七高山のシュカブラはいつもよりも少ない。大物忌神社も雪解けがだいぶ進んでいるようである。もう正午を過ぎていたが山頂は目前だった。
山頂到着は午後1時。ようやくたどりついたといった状態で二人ともヘトヘトであった。しかしそれだけに山頂に到達した達成感は格別のものがある。見渡せば360度の展望が広がっていた。今日は見えないものはないほどである。明日登るはずの月山も南にくっくりとそびえ立っていた。眼下には日本海が広がっている。遙か遠くには水平線があり白い雲がちょうど海と空とを分けているようであった。
上空は一点の曇りもない快晴でも強風は相変わらずだった。寒さもハンパではなくまるで厳冬期を思わせるほどの気温の低さを感じさせた。これではとても長居する気分ではなく、一通り写真などを撮り終えると30分ほどで下山することにした。少し下れば風は治まるはずであった。シールをはがす手もこころなしか震えていた。下ろうとすると秋田組の一人がちょうど山頂に登り着いたところだった。
山頂直下はアイスバーンだった。しかし雪面はフラットであり滑降する分には特に問題はない。雪面が柔らかくなり始めたのは七五三掛付近からであった。広々とした斜面はまさしく山スキーのためにあるといっても過言ではない。そこからはお互いに写真を撮りあいながら滑降を楽しんだ。雪質は最高のザラメといってもよく何もしなくてもスキーが勝手にターンをしてくれる。滑っても滑ってもコースには果てがないような斜面が延々と続いた。
下るほどに気温がどんどんと上昇していた。スキーは当然ながらあまり走らなくなる。905m点からはこれまでのように自由にはターンをさせてはくれなくなっていた。一方では斜度も緩やかになってゆくばかりで、この付近はただスキーの上に乗っているだけでよかった。中島台の樹林帯も快適なツリーランを楽しみながらの滑走が続いた。前方に獅子ケ鼻取水口が見えてくればツアーも終わりだ。林道の周辺は朝方よりもさらに雪が融けていてフキノトウが盛りを見せている。獅子ケ鼻から駐車地点まではまもなくであった。
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駐車地点 |
905m峰付近から |
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905m峰付近で(秋田なんどさんチーム) |
稲倉岳が遠くに |
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七五三掛付近の急坂 |
雪煙が舞う外輪山 |
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最後の急坂 |
新山の山頂 |
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途中で憩う(上野氏提供) |
記念にパチリ |
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上野氏 |
筆者(上野氏提供) |
