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山 行 記 録
【平成20年5月18日/大日杉〜地蔵岳〜大又沢〜飯豊山〜本社(おむろ)ノ沢〜地蔵岳】

おむろノ沢滑降コース(地蔵岳から)
【メンバー】4名(柴田、上野、神田、蒲生)
【山行形態】テレマークスキーによる山行、春山装備、日帰り
【山域】飯豊連峰
【山名と標高】 地蔵岳 1538.9m、飯豊山2102m
【地形図 1/25000】岩倉、飯豊山、大日岳
【天候】晴れ
【参考コースタイム】
大日杉小屋5:30〜ザンゲ坂〜長ノ助清水〜地蔵岳8:30〜大又沢出合〜おむろノ沢出合9:15-30〜無名尾根11:10〜飯豊本山12:20-13:10〜おむろノ沢出合13:40〜地蔵岳15:10-30〜長ノ助清水16:50〜大日杉小屋17:30
【概要】
地蔵岳から大又沢に滑り降り、飯豊本山へ直登するおむろノ沢は2年前に単独でやってみようとしたことがある。その日は結局雨で流れてしまい、翌日の空き時間を利用して大又沢の偵察だけを行っていた。今年の雪解けの早さを考えると今回は半分敗退も視野に入れての計画だが、山スキーというのは意外と思い立ったときがベストということも多いものである。個人的には久しく気にかかっていた宿題のようなものだが、2年越しのコースに対する期待感から気持ちはすごく弾んだ。
地蔵から飯豊山へダイレクトに結ぶこのルートは、地蔵岳への登り返しも含めての累積標高差が2310mもあることがわかり、7時の集合時間が早まり大日杉登山口には早朝5時集合となった。他のメンバーは宴会を兼ねて前日から現地入りをしていた。
2年前に比較すると大日杉登山口周辺の残雪ははるかに少なかった。ザンゲ坂も雪渓がわずかに残っているだけで、鎖もすっかり見えている状況である。尾根に登ると真夏のような陽射しが降り注いだ。朝方は冷え込んでいたのだが、これではかなわないとばかり、半袖一枚になる。それでもスキーを担いでいるためか汗がしたたかに流れた。
ザンゲ坂からは完全な夏道だった。一片の雪も見当たらないのでは、山スキーも終焉が近いなあと思わずにはいられない。ちょうどイワウチワが盛りで、登山道の両側は群生となっている。御田の杉を過ぎると登山道にも残雪が現れるようになった。途中から私は登山道から逸れてスキーを引っ張りながら登った。ダマシ地蔵から仰ぐ地蔵岳にも雪は少なかった。その地蔵岳にはちょうど3時間で到着した。ここまでおよそ930m登ったことになり、これから大又沢へ400m余りの下りとなる。山頂からのぞむ飯豊本山はまだまだ残雪が豊富だった。やはり標高の低い地点では雪解けが異様に進んだが、高山では逆に残雪が多いようだ。地蔵岳の標柱もまだ頭さえ出していなかった。
地蔵岳山頂から大又沢へは狭い沢状のコースを降りて行く。滑降は快適だった。スキーを担ぐという重労働から解放されるだけでも喜びなのに、飯豊本山に向かって一気に滑り降りるというシチュエーションは心地よいばかりである。大又沢の沢底に降り立つと雪渓には大きな穴が開いている箇所があった。ここは大きく急斜面を登ってスキーのエッジを利用して凌いだ。こんな箇所が何カ所もあっては敗退するしかなかったが、幸いに沢が開いていたのはここだけであった。状況的には結構危険ともいえる箇所であり、今回が大又沢を通過できる限界だろうと思った。
おむろノ沢出合からは飯豊山へと長い雪渓が伸びていた。デブリもあるがほとんど落ち尽くした感じもあって問題はなさそうだった。おむろノ沢は雪も豊富で快適なシール登高の始まりだ。沢底からはほぼ1000mの高度差を登らなければならない。後ろを振り返ると地蔵岳も大きく競り上り、帰りの登り返しを考えると気が遠くなりそうだった。途中から右手の無名尾根へと登って行く。どこからでも上がれそうだがルートを選ばないと危険ともいえそうだ。稜線付近の雪の状態がわからないので、ブロック雪崩が起きれば一巻の終わりなのだ。ここの急坂は徐々にきつくなってゆくばかりだった。いくら登っても稜線は近づかず、まるで石転ビの雪渓を登っているようなものである。次第に斜度は増して行き、一歩登るたびに喘ぎ声ももれてくる。雪の照り返しも暑くて、喉の乾きには雪を食べて凌いだ。
無名尾根は広い雪原のようになっていた。尾根上は開放感にあふれ、爽やかな風が流れると疲れ切った体がたちまち息を吹き返すようだった。ここの標高はすでに1700m。もう400mも登れば飯豊山の山頂なのだ。左手におむろノ沢の全容が現れてくると前方には本山小屋が見えてくる。右奥にはダイグラ尾根が見えた。見慣れない方角からの光景はワクワクするばかりだ。先頭をゆく柴田氏は一向にスピードが衰えることもなくハイピッチで一人旅を続けていた。
本山小屋には約7時間で登りついた。無名尾根からの所要時間は予想外に短かった。山頂からの大展望を目にすればこれまでの疲れも吹っ飛ぶようだった。念願のおむろノ沢を登り詰め、ダイレクトコースから飯豊山に登れたという感激は格別のものがあった。まだダイグラ尾根が利用できないためか、本山小屋にも三角点にも人の姿はなかった。天候がよいのに人の気配がないというのは不思議な感じさえするようだった。無風快晴。ここでは縁側に横になって昼寝をしているようなのどかさがある。山頂ではゆったりとした時間が流れているようだ。手足を投げ出してしばらく至福の時間を楽しんだ。
本山小屋の目の前から滑り降りられるという感覚は初めてのものだった。残雪は豊富で山頂からはどこでも滑って行けるのだ。本山小屋からは地蔵岳に向かって大きく広がるおむろノ沢の大斜面があり、これを滑らずして今回のダイレクトコースはない。まさしくよだれが出そうな程の壮大なスケールの斜面が、今日は私達だけの貸し切りなのだ。雪面はフラットでクレパスも皆無だった。危険箇所がないのを確認すると、おむろノ沢へは思い思いに飛び込んで行った。このようなスケールの快適さは最近には無かったような気がした。
急斜面を滑っているとトンビが遊びにきた。トンビにしてみれば私達がよほど珍しかったのだろう。普段ならばすぐに見えなくなってしまうものなのに、今日はしばらく私達にまとわりついていて、容易に去ろうとはしなかった。しばらくすると急降下の曲芸まで見せてくれたりした。そんな優雅な時間がしばらく続いた。右手からの沢が合流する直前ではデブリの堆積があり、さすがにそこは一気に滑り降りて行く。急斜面が終わるとようやく安全地帯だ。あとはおむろノ沢出合まで緩斜面を飛ばした。
飯豊本山からおむろノ沢出合までは30分ほどで滑り降りた。正確には28分しかかかっていない。登りで3時間もかかったところをたった28分とは、にわかには信じられないようなものだが、これでも何回も立ち止まりながらお互い写真を撮りあって下っているのである。それだけこの斜面が快適だったということなのだろう。近くの壁面からは清水のような雪解け水が流れており、私達は満ち足りた思いで腹一杯に飲み干した。見上げると新緑と青空がまぶしく、物音ひとつしない静寂さに満ちている。ここはほとんど人の訪れることもない桃源郷のような場所であった。
地蔵岳へはシールを貼りなおして登り返しとなる。振り返ると飯豊山が徐々に立ち上がってくる。本山から滑ってきたばかりのシュプールがみえるようだった。この斜面を写しておかなければと、カメラのシャッターを何枚も切ってみた。地蔵岳へは予定よりも早めに戻ることができた。日はすでに西に傾きかけていて、私達の影も長く伸びはじめていた。飯豊山を望めるのは最後だと思うとなかなか離れ難いものがある。いまあの斜面を滑ってきたのだと振り返ってみるのは実に感慨深いものがあった。
地蔵岳からスキーで滑れる距離はそう長くはない。もう少し早い時期ならばここは大日杉までも滑って行けるのだが、今日はないものねだりというものである。雪をつなぎながら滑れるだけ滑り続け、御田の少し上部付近でスキーを担いだ。長ノ助清水では冷たい水で喉を潤しながら最後の一休みだ。夕刻が近づいていたが、ここまで下れば大日杉までは30分もかからない。
残雪の五段山を背景に咲き誇るタムシバはいつもながら春の風物詩だった。タムシバは盛りを過ぎていたが、ムラサキヤシオはこれからが出番だとばかり、いたるところで蕾が開き始めている。尾根の末端からはザンゲ坂があり、杉林の間から林道が見えてくると大日杉小屋はまもなくだ。今日は飯豊山の山頂を踏んだおかげで飯豊連峰を味わい尽くした満足感がある。12時間の長いようで短かかった山スキーが終わろうとしていた。

コース概要

飯豊本山から地蔵岳のコースを俯瞰

暑い夏道 |

御田付近の新緑 |

地蔵岳目前 |

地蔵岳山頂から飯豊山 |

地蔵岳から滑降 |

おむろノ沢を登る |

本山小屋が見えた! |

地蔵岳を背景に |

山頂目前 |

本山小屋から大日岳を望む |

梶川尾根と杁差岳 |

本山からのエントリー |

地蔵岳めざして |

至福のとき |

至福のとき |

至福のとき(柴田さん撮影) |

地蔵岳で佇む |

地蔵岳から飯豊山を振り返る(上野さん撮影) |

イワウチワの群生(上野さん撮影) |

飯豊山めざして大又沢へ(上野さん撮影) |

おむろノ沢でくつろぐ(上野さん撮影) |

本山小屋でくつろぐ(上野さん撮影) |

大又沢通過(上野さん撮影)※下山時 |

地蔵岳への登り返し |

タムシバと五段山(下山時) |

お疲れさまでした |