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山 行 記 録

【平成16年9月8日(水)/トムラウシ温泉からトムラウシ(台風撤退)】



前トム平へ登る途中


【メンバー】単独
【山行形態】夏山装備、トムラウシ温泉「東大雪荘」泊(山行は日帰り)
【山域】大雪山(表大雪)
【山名と標高】トムラウシ(とむらうし)2141m(前トム平で台風撤退)
【天候】雨(強風と濃霧)
【温泉】トムラウシ温泉「東大雪荘」
【行程と参考コースタイム】
短縮登山口8:30〜カムイ天上分岐9:17〜コマドリ沢11:00〜前トム平(台風撤退)11:45〜コマドリ沢12:00〜短縮登山口13:40着(車)トムラウシ温泉「東大雪荘」(泊)

【概要】
トムラウシは大雪山国立公園のほぼ中央に位置し、表大雪と十勝連峰の中間という遠隔地にあって、複雑な地形と高山植物が織りなす豊穣な自然美から「大雪の奥座敷」とも呼ばれている山である。昨日登った十勝岳とは縦走路上に近接しているのだが、それぞれに日帰りで登ろうとすると、かなりの遠回りをさせられるはめになる。富良野市からトムラウシ温泉までは狩勝峠を越えて石狩山地を大きく迂回しなければならなかった。

猛烈な台風18号が未明から北海道に上陸し、トムラウシ温泉「東大雪荘」周辺でも大荒れの天候であった。今日は早朝には出発するつもりで朝食を弁当に替えてもらい、昨夜のうちに受け取っていた。しかし雨風が強くて出発を見合わせている間にも時間はどんどんと過ぎて行き、結局、その弁当は部屋で食べる羽目になってしまった。「東大雪荘」に泊まった人達はみな停滞を決めてしまったのか、様子を伺いながらも誰も山に向かう者はいなかったが、私は午後から晴れ間も出るだろうという予測を立てて、とりあえず東大雪荘を8時に出た。

短縮登山口までは約8kmの砂利道をゆく。途中、エゾシカが林道の真ん中に立っていて、写真を撮ろうとして車を止めたらすぐに木立の中に逃げていった。駐車場には簡易のトイレが設置されてあり、帯広ナンバーが1台だけ駐車中であった。登山届けを確認すると二人組が昨日からトムラウシに入山していて、今日が下山予定日だとある。車はその1台があるだけで、今日のこの悪天候の中、トムラウシをめざして登ろうとする者は誰もいないようであった。トムラウシ温泉を出る頃には風は大分弱くなっていたが、登山口周辺はさすがに風が強く、ガスが流れる様はまるで冬山での風雪を思わせるほどで、周りの太い樹木でさえも風に煽られて大きくしなっていた。

台風は現在、小樽付近の沖合いを通過中らしかったが、徐々に弱まることを祈りながらとりあえず行けるところまでいってみるつもりで準備をする。雨は止む気配がないので雨具を最初から着た。登り始めるとまもなくして、前方から下ってくる二人組と出会った。その人達は昨日から入山していた二人で、一人は地元の人でどうやら関東からのお客さんを連れたガイド山行のようであった。その地元の人からは「雨は上がったようだが稜線にでるとちょうど吹き返しがあるはずだから気をつけるように」とのアドバイスを受ける。まもなくトムラウシ温泉への分岐があり、分岐からはしばらく登って行くとカムイ天上に着く。ここから沢沿いに直進する旧道は通行禁止となっていて、昨年整備されたばかりという左手の新道に進んだ。新道は笹原を切り開いた広い道で、天候さえよければ展望をたのしみながら歩けそうであった。新道を歩いている途中で薄日が射したりしたが、それもつかの間で、すぐにまた強烈な突風と雨が襲ってきて、荒れ模様は容易に治まる気配はなかった。コマドリ沢からは沢沿いの急斜面を登る。ときどき紅葉の写真を撮りながら進んだ。風はますます激しさを増していた。石がゴロゴロと広がるガレ場はペンキ印を確認しながらトラバース気味に登って行く。この付近から森林限界となり、ガスを伴った風雨は一層強まった。この時点ではまだ一歩ずつなら前進は可能だろうと安易に考えていた。しかし稜線はほとんど見えず、周囲の状況もよくわからないほど視界がなくなりつつあった。天候はよくなるどころか、むしろ悪化の一途をたどっているようであった。今回の台風は並みの強さではないのを感じていた。地鳴りのような不気味な風音が、ずっと止まないことも不安感が募った。猛烈な風が沢沿いに上がってきて、這い蹲っていた私は体ごと持ち上げられそうになったりした。前トム平の稜線はもう目と鼻の先だったが、ふいに恐怖感が襲ってきてここから引き返すことにした。

コマドリ沢までは一気に下った。雨はますます激しくなっていたが、樹林帯に入ると風は少し弱まって先ほどの恐怖感は薄らぎ、沢を離れて新道の迂回路まで戻るとようやく安堵感に浸った。山頂までもう少しというところまで登りながら引き返しただけに、気分は打ちひしがれていた。しかし東大雪荘にもう1泊して明日もう一度出直そう、そう考えたら少し気分が落ちついた。ラジオで台風状況を聞いていると、どうやら明日は台風一過で好天に恵まれそうであった。

トムラウシ温泉に戻り、さっそく今晩の宿泊を申し込んだ。温泉に入り、湯船に浸っていると、落ち込んでいた気分が徐々に消えて行くようであった。昨夜、トムラウシ温泉に同宿した人達は大勢いたのだが、私以外は停滞していたらしく、みんな温泉に入ったりしながらのんびりとロビーなどでくつろいでいた。今日はすでに昼食時間は過ぎていたため、宿の食事は夕食まで待たなければならなかった。私は明日の予定を当初、雌阿寒岳や雄阿寒岳を考えていたので、濡れたものを部屋に乾かしながら、これから残りの山をどうするか考えなければならなかった。その夜、台風による倒木で電線が断ち切られたらしく、「東大雪荘」では停電になってしまい、それは長時間、回復しなかった。



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