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山 行 記 録

【平成12年3月4日〜5日/奥岳から安達太良山】



くろがね小屋の近くにテントを設営する[2000.3.4撮影]
(テントはICIのゴアライト)

【メンバー】単独
【山行形態】冬山装備、テント泊、テレマークスキーによる登山
【山域】奥羽山脈南部
【山名と標高】】安達太良山 1700m
【天候】23日(曇り)、24日(晴れ)
【温泉】岳温泉(300円)
【行動時間】
(第1日)2時間30分
(第2日)4時間

【概要】
無性にテントに泊まりたくなり、安易に決めてしまったのが今回の安達太良山だった。快適な温泉付きの小屋があるのに何も重荷を背負って登ることもないのにとも思わないではなかったが、凍えるような氷点下の中でシュラフに包まれながら大地に眠りたいと、ここ最近しきりに思っていたのだった。しかし3月に入ってからは冬型もだいぶ弱まってきていて、平地では4日の昼過ぎから雨模様を予想している。どうも数年前に冬の上高地や西穂で味わったような厳しい冷え込みは期待できそうもなかった。厳冬期はすでに過ぎ去ったのかもしれなかった。たまらなく冬が好きなものにとっては、最近の春の兆しといったものは、あせりに似たような、せつない感情が湧くのだ。

奥岳スキー場からすぐにスキーにシールを貼り付けて登り始める。久しぶりに背負うザックは背中にずしっと重い。気温も高く体中からすぐに汗が噴き出した。勢至平まで続く急登はつらくて、途中何回もテルモスを出してはコーヒータイムをとる。しかしテントを背負っているというのは、いつでもどこでもホテルになるのだ、と思うと今更ながらうれしくなってしまう。もっとも、こんなことを考えるというのは体力が落ちている証拠かなあとがっかりするばかりだが・・・。
暖冬といわれた今冬は山形では20年ぶりくらいの大雪となったが、この安達太良山でも最近まで降り続いた雪は思った以上に多い。とくに勢至平を過ぎると急斜面のトラバースがあるが、積雪の多さにいつ雪崩がおきてもおかしくない状況だった。幸いここは篭山の北斜面なので雪が締まっているのを期待するばかりで、足早に通過したものの内心ヒヤヒヤものである。この区間は雪崩ばかりではなくて雪が堅ければ滑落も心配な箇所だけにいつも緊張を強いられるところだ。

昼ちかくになってくろがね小屋に到着し、テントは小屋の近くに設営した。鉄山の絶壁が目の前である。時間はまだ早かったのでサブザックで山頂まで行くつもりで出かけたのだが、いくらも進まないうちに粉雪が舞ってきた。午前中には馬の背の稜線もはっきり見えていたのだが、たちまち雪で視界が遮られ見えなくなってしまった。見る間に風雪に変わってきたためにテントまで引き返した。その後は風も強まり雨混じりに変わってきたために山頂は今日はあきらめることにした。遅い昼食を食べた後はシュラフにもぐりこみ、文庫本を暗くなるまで読んで過ごす。夕方、小屋の温泉に入るのも楽しみにしていたのだが、外は雪混じりの風雨のためにテントから抜け出すのがおっくうになり結局入らなかった。夜はスキヤキ鍋とホットウィスキーで体を温める。テントに泊まるときの一番楽しい時間である。外は雨風が耐えなくて一晩中、テントを揺らした。

翌日、テントから出ようとするとファスナーがきつかった。外に出てみるとテントの至る所に氷が付着していてファスナーの部分も真っ白に凍っている。雨風とはいっても途中からみぞれ模様に変わり朝方は冷え込んだようだった。上空は雲の流れが速く東の空が明るい。2カ月前の安達太良山は大荒れのために山頂どころではなかったが、今日は久しぶりに晴れそうだった。今日は時間はたっぷりとあり、天候はよくなるばかりなのでゆっくりと朝食の準備を始めた。メニューはカレーとスープ。また、テルモスにはたっぷりとコーヒーを作った。話し声が外から聞こえるので、テントから眺めていると小屋に泊まった登山者達が次々と山頂へ向かって登っていった。小屋周辺ではまだ舞うように風が吹いていた。バタバタと風にあおられる中でテントを撤収する。

8時半、スキーにシールに付けたまま登り始める。食材がだいぶ減ったので軽くなった筈なのにザックの重さは変わらない。体がまだ慣れていないのかふらふらするようだった。満員だったくろがね小屋はすでに皆出発した様子で人のいる気配はなかった。小屋に覆い被さるように聳える、鉄山の岩壁が雪をまとって美しかった。
峰の辻付近に着く頃は次々と雲が切れてきて青空が広がった。気温もどんどん上昇しているようだった。峰の辻からはいつもは牛の背経由で山頂に登っていたが、久しぶりに最短距離を行くことにした。乳首のような安達太良山山頂は目の前である。青空をバックにした安達太良山は美しく眺めていて飽きなかった。しかしここからは強い風のために表面がクラストしていて滑落の危険があった。この付近はやはりアイゼンとピッケルの世界だろうか。山頂が目前になったところでシールの限界を感じてスキーをはずし、テレマークブーツにアイゼンを装着した。山頂では遮るもののない360度の展望を楽しむ。

山頂からは薬師岳経由で奥岳をめざす。あとはほとんど下りなのでシールをいったんはずしたが、クラストした雪面は堅く、ふたたびシールを付けなおした。見下ろせば春を感じさせるような強い日差しと青空に誘われるようにして、スキー場の方からも登山者が何人も登ってきていた。このまま下るのがもったいなくて途中、仙女平の分岐付近でコーヒーブレーク。今日は全く春山といっていいような天候だった。
あだたらエクスプレスの薬師岳駅からはシールをはずしてゲレンデを一気に下り、久しぶりのテント泊、テレマークツアーを終了した。下山後はいつもの岳温泉に直行したが、汗を流しただけではこの2日間の疲れはとれそうもないほど困憊気味で、しばらく車の運転をする気にもなれなかった。久しぶりに20kg以上のザックを背負い続けたためだとは思ったのだが、こんなことでは今年の山行も心配になってきた。

テレマークスキーで山頂から薬師岳へのコースは初めてだったが、どうもこのコースはテレマークや山スキーには不向きのようだった。山頂からは烏川の谷筋を滑降してスキー場の途中に飛び出すか、勢至平に出て林道を下るほうがもっとスキーを楽しめるようだった。それは次回の楽しみにすることにしよう。



勢至平から望む安達太良山(左)、篭山(中)、矢筈ガ森(右)


くろがね小屋と馬の背[2000.3.4撮影]
薄雲がひろがってきて荒涼とした風景となる


テントを設営したら早速、雪を解かして水作りだ。
(テントの中から)[2000.3.4撮影]


結局、テントは一張りだけだった。
(幕営場所の向かいの尾根から)[2000.3.4撮影]


テント設営地点から仰ぎ見る鉄山の絶壁[2000.3.4撮影]
夏には大したことはないが雪が張り付いた岩壁は結構迫力がある。


雪に閉ざされたくろがね小屋。[2000.3.4撮影]
確認しなかったが、この日は7・8人ぐらいのバーティが
何組も次々と登ってきて小屋は満員だったようだ。


峰の辻の標識(奥は篭山のピーク)[2000.3.5撮影]


峰の辻を少し下った地点からたおやかな安達太良山を望む[2000.3.5撮影]
右下の方からトレースが見える


安達太良山山頂[2000.3.5撮影]



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